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院長ブログ 投稿日 2023-09-30、最終更新日 2023-10-06
検査で陰性だったはずなのに疾患が? 腹痛時の診断の実際のところ
院長の新谷です。今回は腹痛時の診断について。というのも担当する患者さんの診察をしていると「検査で便をとって、陰性と言われているので大丈夫です」このように思い込んでしまっている人が意外と多いのです。
医師から「陰性」とはっきり言われているのですから、安心してしまうのも無理はありませんが、実際は思わぬ病気が隠れていることもあるのです。
今回はそんな検査で陰性と言われた際の思わぬ落とし穴から、腹痛時の診断の実際までをじっくりご説明していこうと思います。 ★ALOHA外科クリニックでは『腹痛・がん専門外来』の実施を計画しています!
クリニックに行く判断基準とは?
熱を計ることが大切です。体の反応のなかで細菌感染を起こした場合、虫垂炎・胆嚢炎も細菌感染が原因。
ですから37度を超えてお腹が痛ければ精密検査を受けることをお勧めします。検査だけを優先的に行うというよりは、まずは診断をして「どういう鑑別診断が考えられるから、どういう検査をする必要がある」という判断が大切です。
日本で保健診療を行う場合は、何かしらの症状があることが大前提。
それによって病気を疑い、鑑別診断のためにCT検査や血液検査なりをします。
なにも症状がないときに検査を行うことは保険診療ではできません。
しっかりとした現病歴や過去の既往歴(本人とその近親者の健康)などを我々が問診した上で、必要な検査をオーダーするという流れになります。
生活や既往歴、家族の疾患歴で病状判断をすることが大事
例えば、下痢で悩まれている患者さんがいたとします。適切な診療もなされている。
しかし、だからといって本当に投薬のみでいいのか。投薬をして良くなればいいですが、その裏には別の病気が隠れているのではないか、あらゆる可能性を疑うことが大切。 20~30代の健康で既往歴も何も問題のない人に大腸検査は勧めません。 50~70代の食生活が肉中心など偏っていて、大腸がんの既往歴があれば、一度大腸検査を勧めるというのが妥当だと思います。
「検査結果⇒陰性」の思わぬ落とし穴
冒頭でお伝えした通り、患者さんのなかには「検査で便を2回とって陰性だったので大丈夫です」ということを言われる方がいます。
そこでいう検査とは、あくまでもスクリーニング検査(拾い上げの検査)。
便を2回とって陰性だった人のなかにも、10%弱で病気・ポリープ・悪性のがんが隠れていることがあります。100%ではないことはお伝えしたいです。
しかしながら、検診や人間ドッグをやる側は「この検査は大腸がん検査です」といって、検便や便潜血陰性だったら大丈夫と推すわけです。
それが本当に大丈夫なのかどうか。ずばり、私なら信用しません。 大丈夫という烙印を押すことは難しい。スクリーニング検査という意味では問題ないと思います。 ただ「ほかに症状があるかないか」「家族歴に問題はないか」など、そういうところまで徴収しているところってどこまであるの?というのが疑問です。
高いお金を掛ければいいという話ではありません
もちろんお金に余裕がある方は高級ホテルで、何十万円もかけた人間ドックとスーパードクターの説明を希望されるかもしれませんが、お身体の悩み事すべてを各分野のスーパードクターに託することは、決してすべての方に必要な医療ではないと考えています。
私たちのような小さなクリニックでもそれなりの検査をすることはできる。その上で、専門性のあるドクターにつなぐことが大切だと考えています。
腹痛に関するガイドラインはありません。
腹痛というのは、消化器外科のなかでも非常にグローバルな領域。なにせお腹全体のことですから。
そのためフローチャートはあっても、ガイドラインなどはありません。
例えば虫垂炎ひとつとっても、専門性があるものの虫垂炎専門の医者はいないというのが現状です。
コロナ禍でわかった、保存的治療の有効性。
ガイドラインがすべてありきではなく、医療情勢も関係しています。
その最たるものが新型コロナウイルスの流行。忙しくて対応できない医者たちは、みんな保存的になっていきました。
虫垂炎を含めた年間の手術件数は極端に減り、虫垂炎でいえば毎年5万例行っていたものが半分以下になるほど。
つまりそれは、保存的治療で良くなる症例があるという事です。
もちろん中にはどこかのタイミングで手術をやる必要がある人も何%かはいるので、そういうことを患者さんに提案して「待機的に手術するのか」「炎症を起こしたときに手術をするのか」を考えていけばいい。すべての手術を急性期にやる必要がなかったということです。
最近で経口抗生剤というのがしっかりあるので、長く抗生物質を点滴して、経過観察をする。その上で状態が良くなれば、一泊の入院で済ませることだって可能です。
それなのに病院では今なお、日本のこれまでのしきたり的な思慮で、入院させて絶食して1週間くらい治療する、というやり方を続けている。
そういうことが今日の医療経済の崩壊に繋がっています。
私たちはそういったところを正していきたい。
新たに開設する『腹痛・がん専門外来』では、患者さん一人ひとりとしっかり向き合い、親身になって相談に乗り、最適な方法を提案できる『お腹の痛みの外来』というのをできればと思っています。
この記事の文責者
新谷 隆 NIIYA TAKASHI ALOHA外科クリニック院長
資格・所属
- 日本外科学会専門医
- 日本消化器外科学会専門医・指導医
- 日本内視鏡外科学会技術認定医(胆道)
- 日本ヘルニア学会会員
- 日本緩和医療学会会員
- 日本短期滞在外科手術研究会
- 「がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会」修了
- NST研修修了 日本静脈経腸栄養学会
- 昭和大学消化器・一般外科兼任講師

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