院長ブログ
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院長ブログ 投稿日 2023-11-01、最終更新日 2023-11-13
日帰り手術と、入院を伴う手術の違い。日帰り手術を可能にした、麻酔の進化について。
院長の新谷です。当ブログでは『日帰り手術』の普及を目指し、これまで様々なテーマを取り上げ、魅力・メリットを発信してきました。そうした地道な努力の甲斐もあり、鼠径ヘルニアの日帰り手術を希望される方の割合がNBDベースで、当初は6%だったものが8~9%と少しずつ増加。東京に関しては、18%と大幅に増加しているという結果に。大変喜ばしいことではありますが、私たちは現状に満足していません。もっと、もっと広めていかなければ。そこで、今回は基本に立ち返り、改めて日帰り手術のメリットをご紹介するとともに「全身麻酔をするのに日帰り手術って大丈夫なの?」「術後の自宅での過ごし方で注意する点は?」といった、不安に感じるであろうポイントについて、細かくご説明していこうと思います。
日帰りと入院では、何が違うのか。
大きな違いは術後の管理。入院施設で手術を行う場合は、医師や看護師が患者さんの管理をします。例えば手術当日、全身麻酔をかけるのであれば、絶食で来ていただかなくてはいけないし、水分制限があるところでは食事は提供されず、点滴をしている間は水を飲むことも制限されます。それとは逆に日帰り手術の場合は、自宅で経過を観察するため自己管理能力が必要になります。あとは、当クリニックが行っている日帰り手術では、手術が終わってから2時間程度で回復の過程を計画的に見ますが、入院の場合は心電図モニターやモニタリングすることで患者さんの安全を計測しつつ、深部静脈血栓症の予防のためにフットポンプをつけて点滴をし、「点滴をしているから食事は明日からで大丈夫だね」と言って、絶飲食の時間が長くなるというケースが多い。あとは入院なら3泊4日ほどかかりますが、当クリニックなら2時間程度で自宅に帰り、普段通りの生活に戻ることができる点も大きな違いです。
■コスト面の違いについて
コスト的な部分で言うと、入院施設の場合は1手術当たり約55万円の包括的なお金が掛かるのに対して、クリニックであれば40万円程度。この15万円はかなり大きいと思います。なぜ、これほどまでに金額に差がでるのか。当クリニックでは患者さん一人ひとりに合わせて、必要な検査のみを行うからです。患者さんにかける負担はできる限り少なくしたい。『最軽量で最強な医療』これこそが、当クリニックが目指す“医療のあるべき姿”だと考えています。
■日帰り手術ができないケースについて
基礎疾患がコントロールされていない人。例えば血圧や不整脈、糖尿病など。糖尿病が併存すると合併症のリスクが高まると言われているため、そこに関しては入院された方がよろしいのではないかと思います。あとは出血傾向のある方も日帰り手術は受けられません。これは抗凝固薬というのを使って脳梗塞・心筋梗塞を治療している人。弁膜症で予防的に投与を受けている方は出血しやすい傾向にありますが、我々が行っている手術では低出血リスク分入りますので、ほぼ抗凝固薬を中止することなく手術はできます。ただし、血液疾患や肝硬変などで血小板など材料が少ない人に関しては、安全を考えると病院(輸血ができる環境)で手術をした方がいい状況もあります。
<91歳の方も日帰り手術を受けられました>
その方は高齢ではありましたが、4METs(身体活動能力/座って1METs、立って2METs、歩いて3METs、やや速歩と自転車が4METs)が保たれていたため、日帰り手術ができると判断。術後2時間で、元気にお帰りになられました。
入院も日帰りも、やる手術は変わらない。
技術的なことを言うと、日帰り手術をやっているクリニックでは『内視鏡外科技術認定医』という資格を持っている人が多いです。大学病院・総合病院では、なかなかヘルニアは悪性疾患ではないので、研修途中の先生がトレーニング的な要素でやっているケースが多いです。施設や技術者によって力量が違うのは事実ではありますが、よりクオリティの高いものにしようという信念を持った人間が、日帰り手術に携わっていると私どもは考えています。
日帰り手術後の家での過ごし方
原則我々がやっている手術では、食事内容の制限などもありません。もちろん様子を見ながらではありますが、普段通りの生活を送っていただいて構いません。しかし、まったく痛みがない手術ではありません。それも徐々に右肩下がりに和らいでくるのであれば、それは手術の侵襲が術後回復していると言えます。ずっと病院で寝ていなければいけないという痛みではないのでご安心ください。もし、どうしても痛みが治まらなかったり、発熱など、もしもの症状が起こったりした場合でも、ナースコール替わりに緊急電話(院長の連絡先など)に連絡をしていただければ、その症状に合わせた適切な対処をします。
そもそも日帰りで、麻酔をして大丈夫なの?
問題ありません。それがここ3年間、日帰り手術をやってきた実感です。病院におけるヘルニアの症例の場合は、若い先生方が中心となって麻酔をかけることが多いですが、当クリニックでは専門の麻酔医を雇用して麻酔をかけてもらっています。実際にほとんどの方が、術後2時間で麻酔の影響もなく帰院されます。もちろんゼロではありませんが、全体の0.4%(1000分の4)程度です。我々と同様にやっている施設のデータを合わせても、日帰りだから悪かったということはありません。適切な体制と適切な処置ができていれば、日帰り手術の全身麻酔というのは問題なく、推奨できるレベルの麻酔なのではないかと思います。
当クリニックの最寄り駅である「不動前駅」から、かむろ坂を歩いてクリニックまで辿り着ける身体能力がある方なら、全身麻酔は安全に行うことができます。
日帰り手術を可能にした麻酔の進化
昔に比べて大きく進化したのはモニター類です。例えば脳波を見ながら麻酔深度を確認し、痛みがなく手術が行われているかを確認できるようになりました。あとは全身麻酔をかける際に使用される筋弛緩薬。筋弛緩薬を使うと呼吸停止になり、それを人工呼吸器でアシストしながら、作用がなくなるのを待つというのが従来のやり方でした。現在では筋弛緩薬の作用を完全にブロックする薬が当たり前のように普及しています。その薬を投与することで自発呼吸が回復するため、術後の呼吸抑制という問題がほぼ皆無に。手術の短時間化に加え、術後回復の短時間化、患者さんの体力的な負担も大幅に軽減されました。それにも拘わらず、未だに病院では術後に酸素投与をしています。
■病院とクリニックの麻酔は同じ
病院はガス麻酔が多く、クリニックの日帰り手術の場合は完全静脈麻酔が主流。完全静脈麻酔の方が術後の悪心・嘔吐が少ないと言われています。それなのになぜ病院はガス麻酔を使い続けるのか。以前、とある医師に質問したことがありました。その時に返ってきた答えは「ガス麻酔はダイヤルを捻るだけ、静脈麻酔は薬の調整が必要だから」というものでした。ただ手間がかかるという理由から、ガス麻酔を選択されてしまっている患者さんがいると思うと残念でなりません。我々は、今後も患者様にとって最善の医療を考えて邁進していきます。
■術後2時間のケアに明確な基準を!
当クリニックでは『modified Aldrete score』を基準に帰宅判断を行っており、スコアが9点以上にならなければ帰ることができません。最終的には医師・看護師、双方の納得を持って患者さんを帰院していただくことを徹底しています。逆にそういうことをしないで、バイタルサインのチェックだけで、術後の結果を漠然と見ている病院というのは、本当に患者さんにとってよりよい医療かどうかという視点で見ると、微妙である、と言わざると得ません。
このブログをご覧になっている方で「ちょっと話だけでも聞いてみようかな」という方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。また、ご自身だけでなく周りの方にも「日帰り手術なら、食事制限もなく、翌日から普通に出勤できて、日常生活のなかにしっかり溶け込むことができる」という事実をぜひ教えてあげていただけると幸いです。
この記事の文責者
新谷 隆 NIIYA TAKASHI ALOHA外科クリニック院長
資格・所属
- 日本外科学会専門医
- 日本消化器外科学会専門医・指導医
- 日本内視鏡外科学会技術認定医(胆道)
- 日本ヘルニア学会会員
- 日本緩和医療学会会員
- 日本短期滞在外科手術研究会
- 「がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会」修了
- NST研修修了 日本静脈経腸栄養学会
- 昭和大学消化器・一般外科兼任講師

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