日帰り手術コラム
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日帰り手術コラム 投稿日 2025-06-04、最終更新日 2025-06-04
腹腔鏡下鼠径ヘルニア日帰り手術の歴史と普及
腹腔鏡手術の導入と進化
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1990年代初頭:腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術の始まり
- 1990年にアメリカのRalph Ger博士が腹腔鏡を用いた鼠径ヘルニア修復術を初めて報告しました。
- その後、1992年にMaurice Arregui博士とRobert Fitzgibbons博士が現在のTAPP法(経腹的腹膜前修復法)の基礎を、1993年にはEdward Felix博士とIrvin Roslyn博士がTEP法(完全腹膜外修復法)を開発しました。
- 日本では1991年に腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術が導入され、メッシュを用いた術式が発展していきました。
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低侵襲性の確立と技術の向上
- 腹腔鏡手術は、従来の開腹手術に比べて傷が小さく、痛みが少ない、回復が早いというメリットから、医療現場で急速に普及していきました。
- 特に、両側のヘルニアに対しては、一つのアクセスで左右両方の治療が可能であるという腹腔鏡手術の特性が、患者さんの負担軽減に大きく貢献しました。
- 3D画像システムやロボット支援手術の導入、さらに傷を一つだけにする単孔式手術の開発など、技術は常に進化を続けています。
日帰り手術への移行と普及
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欧米での先行導入
- 欧米では、医療保険制度や医療提供体制の違いから、日本よりも早くから「オフィスサージェリー」と呼ばれるクリニックベースの日帰り手術が普及していました。特に鼠径ヘルニアは、頻度の高い疾患であり、日帰り手術の代表的な疾患として位置づけられていました。アメリカでは、外科手術の75%が日帰り手術へとシフトしていった時期もありました。
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日本での日帰り手術の動き
- 日本では、欧米に遅れること約20年で日帰り手術が本格的に導入され始めました。
- 1995年: 湘南鎌倉総合病院に3床の「日帰り手術センター」が開設され、早朝入院・朝一番の手術・夕方退院のシステムが稼働し、全国から注目を集めました。
- 1998年: 執行クリニックで鼠径ヘルニアの外来日帰り手術が開始されました。当初は保険診療での日帰り手術に対する医療者側の意見も分かれていましたが、患者さんの早期社会復帰のニーズは明らかでした。
- 21世紀に入ってからの普及: 2000年代以降、腹腔鏡手術の技術確立と医師の熟練度の向上、麻酔技術の進歩(特に短時間作用型の麻酔薬の開発や疼痛管理の改善)、そして日帰り手術に特化した医療機関の増加により、腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術(両側を含む)における日帰り手術は一般的な選択肢として普及していきました。
- 現在では、都心部を中心に鼠径ヘルニアの日帰り手術を専門とするクリニックが多数存在し、より専門的で質の高い日帰り手術が提供されています。これらのクリニックでは、全身麻酔下での手術にもかかわらず、術後の吐き気や痛みを最小限に抑え、患者さんが手術後数時間で帰宅できるような体制を整えています。そんな中、ALOHA外科クリニックはコロナ禍の2020年に開院いたしました。
まとめ
腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術(両側)の日帰り手術は、1990年代初頭の腹腔鏡手術の登場と、それに続く技術革新によってその基盤が築かれました。そして、欧米での日帰り手術の先行導入と、日本国内での日帰り手術専門施設の増加や麻酔・術後管理の最適化によって、2000年代以降に大きく普及しました。患者さんの負担軽減と早期社会復帰というニーズに応える形で、現在の「日帰り手術」という選択肢が確立されてきたと言えます。
この記事の文責者
新谷 隆 NIIYA TAKASHI ALOHA外科クリニック院長
資格・所属
- 日本外科学会専門医
- 日本消化器外科学会専門医・指導医
- 日本内視鏡外科学会技術認定医(胆道)
- 日本ヘルニア学会会員
- 日本緩和医療学会会員
- 日本短期滞在外科手術研究会
- 「がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会」修了
- NST研修修了 日本静脈経腸栄養学会
- 昭和大学消化器・一般外科兼任講師

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