「鼠径部ヘルニア診療ガイドライン 2015」を紐解く
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「鼠径部ヘルニア診療ガイドライン 2015」を紐解く 投稿日 2020-11-14、最終更新日 2023-04-07
女性ヘルニアに対する術式は?(CQ26-2 )
Answer
女性ヘルニアでは、大腿ヘルニアの確認および予防の観点から腹腔鏡下ヘルニア修復術を含む腹膜前修復法が望ましい(推奨グレードC1)。
術前診断が大腿ヘルニアのみであれば大腿法を検討してもよい(推奨グレードC1)。
※「鼠径部ヘルニア診療ガイドライン 2015」72頁より
解説
大腿ヘルニアまたは合併ヘルニアを覗いた女性鼠径ヘルニア手術3,696例の検討では、再手術率は4.3%で、術式別ではLichtenstein法4.4%、鼠径部切開組織縫合法4.5%、鼠径部切開前方到達メッシュ法4.3%、腹腔鏡下ヘルニア手術1.8%で有意差は認められなかった。
女性鼠径ヘルニアに対するTEP法とOpen法では手術時間、在院日数、合併症、ペインスコア、社会復帰までの時間に差は認められない。
鼠径ヘルニア術後再発の形式は、女性では鼠径54.1%、大腿41.5%、その他4.4%、男性では鼠径88.4%、大腿5.4%、その他6.2%であり、女性の手術では大腿再発が多い。
また全体の再発率も女性が有意に多い。再発の時期は男性と比較し早期に起こっている傾向があり初回手術時の大腿ヘルニアの見逃し、あるいは初回術式時に大腿ヘルニア有無を必ず確認する(routine exploration)ことが必要である。
以上のことから大腿ヘルニアの有無の確認および大腿ヘルニア予防の観点から全身状態が許せば腹腔鏡下ヘルニア手術を含む腹膜前修復法が望ましい。
女性の内鼠径ヘルニアは稀であり、一般的に女性の鼠径管後壁は男性と比較し典型的には強く、外鼠径ヘルニア修復において、後壁補強は不要と考えられている。
女性の大腿ヘルニアにおいて内鼠径ヘルニアが併存することは稀である。
大腿法による修復後の再発率は1~2%である。
このため術前診断が打相対ヘルニアで併存ヘルニアが疑われない場合に限り大腿法を検討しても良い。
※「鼠径部ヘルニア診療ガイドライン 2015」72頁より
(ただし、太字への変更及び下線は筆者)
注記*
女性鼠径ヘルニアでは術前の画像評価による診断が重要と考えられます。我々はヘルニア条件(腹臥位で鼠径部を除圧)でのCT検査を原則撮影し、評価します。
ALOHAクリニックの標準術式であるTAPPは外鼠鼠径ヘルニア・内鼠径ヘルニア・大腿ヘルニアすべてのヘルニア門を直視下にメッシュで被覆する術式ですので、女性鼠径ヘルニアには確実な方法です。
注記*
ただし、鼠径部ヘルニアと鑑別が必要な疾患にNuck菅水腫があります。
この疾患には子宮内膜症を合併することがあり、腹腔鏡手術で腹腔内に水腫内容を播種させてしまう可能性があるので、Nuck菅水腫の場合、その部位にもよりますが、鼠径部切開法による手術をお勧めすることがあります。
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