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院長ブログ 投稿日 2025-03-28、最終更新日 2025-03-28
虫垂炎(盲腸)のついての最新情報
虫垂炎についての最新情報
一般に「盲腸」と呼ばれる急性虫垂炎について、最新の治療法や医学的知見を分かりやすくご紹介します。
虫垂炎とは?
虫垂は、大腸の始まりに位置する盲腸から突き出た、長さ数センチ程度の管状の器官です。急性虫垂炎は、この虫垂に炎症が生じる病気です。典型的な症状としては、
• 初期の痛み:みぞおち周辺に始まり、次第に右下腹部へ移動します。
• 吐き気・嘔吐:食欲不振や吐き気を伴うことがあります。
• 発熱:炎症が進行すると発熱が見られることもあります。
重症化すると虫垂が破れて穿孔性虫垂炎を引き起こし、腹膜炎や膿瘍形成などの合併症を伴うことがあります。
発症率と年齢層
急性虫垂炎の生涯罹患率は 7~14% 程度とされており、特に 10~20歳代 の若年層に多く見られます。ただし近年は高齢化に伴い、高齢者の症例も増加しており、重篤化するリスクが高いことが報告されています。
治療法
急性虫垂炎の治療には主に以下の2つの方法があります。
1. 外科手術(虫垂切除術)
開腹手術:従来の方法で、直接的に虫垂を切除します。
腹腔鏡下手術:小さな切開部を用いて、カメラを挿入しながら行う低侵襲手術です。
2. 薬物療法(抗菌薬治療)
抗生剤を用いて炎症を抑える治療法です。特に 単純性虫垂炎 の場合、保存的 治療として有効なケースが増えています。
標準治療の選択
かつては診断後すぐに手術が一般的でしたが、近年の研究では 抗生剤治療 が一定の効果を示すことが明らかになっています。
• 抗生剤治療:初期改善率は 86~94% ですが、約 30% の患者が再発し手術を必要とします。
• 糞石の有無:糞石が確認された場合、抗生剤治療の成功率は 78% に低下し、再発率は 41% に上昇します。
最新のエビデンス
近年の研究から、保存的治療と手術の有効性を比較したいくつかの論文をご紹介します。
• Varadhan KK et al. (2012)
単純性虫垂炎に対して抗生剤治療と手術の有効性は同等とされました。
• Vons C et al. (2011)
保存的治療群では再発率が高く、30日以内に12%、1年以内に29%が手術を必要としました。
• Rodrigo Moises de A L et al. (2022)
手術群と非手術群の30日後の治療成功率や有害事象発生率には有意差が見られませんでしたが、非手術群では再発率が 18% でした。
おわりに
急性虫垂炎の治療方針は、患者の年齢や基礎疾患、糞石の有無などを総合的に判断して決定されます。近年は抗生剤の進化により選択肢が広がりましたが、再発のリスクを考慮しつつ、医師と十分に相談した上で最適な治療法を選択することが重要です。
今後も新たなエビデンスの蓄積により、治療法の選択基準がさらに精緻化されることが期待されています。
この記事の文責者
新谷 隆 NIIYA TAKASHI ALOHA外科クリニック院長
資格・所属
- 日本外科学会専門医
- 日本消化器外科学会専門医・指導医
- 日本内視鏡外科学会技術認定医(胆道)
- 日本ヘルニア学会会員
- 日本緩和医療学会会員
- 日本短期滞在外科手術研究会
- 「がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会」修了
- NST研修修了 日本静脈経腸栄養学会
- 昭和大学消化器・一般外科兼任講師

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