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院長ブログ 投稿日 2022-11-09、最終更新日 2023-04-07
鼠径ヘルニア日帰り手術 熟考 その5
ALOHA外科クリニックの理念
『住み慣れた家で自分らしい暮らしを最期まで継続できるよう外科学を基盤に支援できるクリニックでありたい』
を実現するために 外来手術室を作りました
この事のメリットは患者さんだけのものではありません
私のクリニックでは医師が当直する必要なく、自宅待機で緊急の連絡に備えることが出来ます
お家でご飯を食べ、シャワーを浴びて、いつもの布団で休めます
狭い当直室で動きも取れないなんて事はありません
健康維持のためトレーニングなども出来ます
看護師さんも当直の必要がありません
患者さんが日帰りできるということは医師・看護師も自宅でゆっくりと休養できると言うことなのです
そのためにしっかりとした 術前評価・麻酔・手術・術後の回復室での観察を経て帰宅までを看護ります → これが看護ですね
不要な酸素投与・抗生剤投与もいたしません
あまりにも 「念のため」 「心配だから」 などと外科学や麻酔学などの医学から逸脱した医師個人での主観的な治療が多すぎると思います
本日は幾多の施設での日帰り手術での運用を参考にALOHA外科クリニックでの術後回復室から帰宅までのマニュアルです
手術後、患者をストレッチャーへ移動(医師が頭側)
→ストレッチャーを回復室廊下へ移動し回復室担当看護師の監視下に置く
→非観血的血圧計 と パルスオキシメータ 装着
→パルスオキシメータ酸素飽和度≧92%であれば酸素投与はしない
ストレッチャー移動しセミファーラー位(呼吸が楽な姿勢)
→心電図は通常モニターしない
→modified Aldrete score(下記)を用いて麻酔後回復を評価(criteria-based recovery)
→9点に到達するまで離床させずにモニターを続ける
→modified Aldrete score≧9到達後、患者に離床・歩行を勧める
→歩行にて回復室ベッドへ移動
The modified Aldrete scoring system(Aldrete JA. J Cain Anesth. 1995;7:89-91)
活動性
2 自発的または命令により4肢すべてを動かすことができる
1 2肢を動かすことができる
0 4肢を動かすことができない
呼吸
2 深呼吸と咳が自在にできる
1 呼吸困難 呼吸が浅い あるいは呼吸に制限がある
0 無呼吸
循環
2 血圧が麻酔前値の±20mmHg以内
1 血圧が麻酔前値の±20~50mmHg
0 血圧が麻酔前値の±50mmHg以上
意識
2 完全に覚醒
1 呼びかけで目を覚ます
0 応答しない
酸素飽和度
2 空気呼吸でSPO2>92%
1 SPO2>90%に保つのに酸素吸入が必要
0 酸素吸入をしてもSOPO2<90%
◎modified Aldrete score:10点満点 回復ベッドへの移動には9点以上必要
→離床や経口摂取開始までの時間には個人差が大きいので時間を決めての回復プロセス進行(time-based recovery)は行わない
◎回復不十分な状態で起床・歩行や飲水をさせるとめまい・失神や嘔吐を起こし、逆に回復遅延となる場合がある
◎創部出血がある場合 担当医に報告
◎創部痛を100mm-視覚的評価尺度(visual analog scale:VAS)で定時に評価
(PACU入室後30分 60分 120分 および退室時)
→VAS>30mmで本人希望すれば鎮痛薬を投与
**日帰り手術では予防鎮痛が極めて重要である
*オピオイド鎮痛薬は副作用(呼吸抑制 傾眠 PONV など)により術後回復を遅延させる
→周術期オピオイド使用量減量のため、多様式鎮痛(multimodal analgesia)を励行
◎悪心も100mm-VASで定時に評価
→VAS>30mmで本人希望すれば制吐薬を投与
術後観察項目
診断名 :
手術時間(分) :
麻酔時間(分) :
麻酔法 :
PACU入室後
歩行までの時間(分):
飲水までの時間(分):
排尿までの時間(分):
退室までの時間(分):
VAS 30分後(mm) :創部痛 mm 悪心 mm
60分後(mm) :創部痛 mm 悪心 mm
120分後(mm) :創部痛 mm 悪心 mm
退室時 (mm) :創部痛 mm 悪心 mm
嘔吐 :有 無
鎮痛薬使用 :有 無
制吐薬使用 :有 無
予定外入院 :有 無
術後感染予防抗菌薬
投与のタイミング
手術が始まる時点で,十分な殺菌作用を示す血中濃度,組織中濃度が必要であり,切開の 1 時間前以内に投与を開始する
TAPP : 不要
鼠径部切開法(メッシュ使用) CEZ 1g
ラパアッペ CEZ 1g
ラパコレ CEZ 1g
The revised postanesthesia discharge scoring system (PADSS)
(Awad IT. Can J Anaesth. 2006;53:858-72)
バイタルサイン
2 術前値の20%以内の変動
1 術前値の20~40%の変動
0 術前値の40%以上の変動
活動性
2 安定した歩行、めまいなし 術前と変わらない
1 補助必要
0 歩行不能
悪心・嘔吐
2 最小限:軽度で治療の必要なし
1 中等度:治療が奏功
0 重度:治療が奏功せず
術後痛
2 VAS=0~3 帰宅前の痛みが最小限 /なし
1 VAS=4~6 中等度の痛み
0 VAS=7~10 重症の痛み
外科的出血
2 少量:被覆交換必要なし
1 中等度:2回までの被覆交換が必要でそれ以上の出血がない
0 重度:3回以上の被覆交換が必要で出血持続
*VAS:visual analog scale(0~10)
10点満点 帰宅には9点以上必要
d)帰宅許可
PACUで看護師は postanesthesia discharge scoring system (PADSS)も評価する
PADSS≧9で帰宅可能状態と判定される
→PADSSの項目には排尿可能であることも確認必要
→帰宅可能状態に到達すれば 麻酔科医 および 術者の診察を経て帰宅
帰宅時には
◎鎮痛薬処方と服薬指導(5~7日分)
◎帰宅後注意点の再確認
*帰宅時に絶対車を運転しない
*翌朝まで付き添い者の観察下で生活する
*創部安静
◎「創部痛が鎮痛薬により経過しない」「創部出血がある」などの場合はクリニックヘ
連絡するように緊急時連絡先を再度教示する
→患者およびその成人付き添い者への指導後、患者は付き添い者と共に帰宅
◎次回外来診察日時予約(術後1~4週間後)
**患者 その付き添い者、看護師、麻酔科医、外科医の一者でも帰宅に同意しない場
合は予定外入院とする
手術翌日電話(8:30~9:00)
NRS :創部痛 悪心
鎮痛薬使用 :有 無 薬剤名( )
制吐薬使用 :有 無 薬剤名( )
日常活動制自己評価 :
満足度 :
*NRS:numerical rating scale
数値評価尺度(0-10):0=全く症状がない 10=想像できる最も強い症状
日常活動性(0-10):0=全く日常生活ができない 10=普段通りの日常生活が可能
手術や麻酔に関する満足度(0-10):0=とても不満 10=とても満足
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